【リスク処理に真価をみる】 朝日プラザシエスタ山中湖コリーナ管理組合 理事長　　　　　今　成　勝　彦 　組織の真価は、リスクが襲った時にあらわれる、と言われる。平穏な時には要領よく課題を処理するのは、それほど難しくない。しかし、突然、予期しない危機が訪ずれると、日頃の元気はどこへやら、慌てふためいておろおろするのが普通だ。よほど、その組織を束ねるリーダーがしっかりしていないと、すっかり評判を落としかねない。 　▽突然の暴風雨で被害 有限会社「フジシロ工業」に仕事を依頼していて、この組織ならリーダーがしっかりしていて安心できると確信した場面に出くわしたことがある。 　当マンションでは、平成２４年秋、�T号館、�U号館の屋上防水工事をフジシロ工業に発注した。９月に着工し、１１月には終わる予定だった。工事は順調に進んだが、１０月のある日、山中湖地方に時ならぬ暴風雨が襲った。気象台によれば、その激しさは１０数年ぶりとのことで、工事中の屋上を風雨が容赦なくたたいた。あまりの激しさに屋上にロープなどで仮止めしてあった建材や、外したアルミ製の笠木が吹き飛ばされ、マンション敷地内はもとより、近隣の分譲地にまでの被害も心配された。 　たまたま、東京の自宅にいた私のもとに、マンション管理人から「少々、面倒な状態が起きています」との連絡が入る。東京も外はかなりの暴風雨が暴れまわっており、現地で起こったことがただ事でないことは容易に推察できた。 　施工発注者として、まず現場に行こうと決断し、連絡から約２時間後、東京から山中湖に向かう。 　 　▽社長自ら雨合羽姿で陣頭指揮 山中湖地方は、まだ強い横風と豪雨が続いており、高速道路も時速５０キロの速度規制がある中、やっとの思いでマンションンにたどり着く。 　そこで目の当たりにしたのが、フジシロ工業のリスクマネージメントだった。 社長自ら、雨合羽にゴム長姿で、マンションに駆け付け、防水工事業者や、フジシロ工業の社員にきびきびと指示する姿があった。ここまでなら、よくある光景で、特筆する必要はないだろう。しかし、６０代後半になる社長が、何度も雨の中を移動しながら、吹き飛んだ部材の回収はもとより、近隣の分譲地にまで、気配りし、問題がなかったかを確かめ、後で当マンションに苦情が寄せられるようなことがないよう、頭を下げに回ってくれたのだ。 　幸い、ご近所にはこれといった被害はなく、あとはマンション屋上に張った防水シートのめくれや、傷を点検することで済むはずだった。ところが、の被害は、吹き飛ばされたアルミ製の笠木が変形してしまい、使い物にならなくなっていたことだ。社長は、直ちにすべて新品に取り換え、マンション側に不都合がないように、この部材の発注を指示したのだ。実は、マンション屋上の縁を保護する笠木は、それぞれ、建物の形態によって違うため、大量生産ではなく、特注品である場合が多く、決して安い値段ではないのだ。下手をすると、この防水工事から得られる利益が吹き飛びかねないほどの負担が回ってくることも覚悟せざるをえない状況だった。 　 　▽笠木を新品に取り換える決断 自然災害とはいえ、自らに重くのしかかってきた負担を顧みず、新品に入れ替える決断を即座にした社長の懐の深さと、工事請負業者としての責任感の強さを強く感じさせられた場面をみた思いがした。 　マンション寿命は、いかに効率的で適切なリニューアル工事ができるかにかかっているとされる。ここが管理組合の理事長として一番心を砕くところだ。利益追求ばかりが先行し、発注を受けるまでは腰を低くしてなんでも注文を聞き入れるかのような姿勢をとるのに、工事を終えるといくらクレームをつけても、言を左右にして、発注者側の要求に応じないのが通り相場だとされる。 　 　▽うれしい責任感と心意気 そんな業者ばかりの中で、屋上防水工事に限定されているとはいえ、決して発注者側に迷惑をかけまいとするフジシロ工業の姿勢は、うれしい。安心もできるのだ。 〜関連する施工事例〜 施工事例1 施工事例2 施工事例3 施工事例4